たすきちのゆるゆるブログ

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セラピストの能力の問題

臨床を支えることば その2

われわれは対象が持っている問題と対象に関する専門家側の知識、経験をゴッチャにしてしまうことがあります。例えば、車のエンジンが動かない。修理工が「修理不能です」といった場合、本当に修理不能の故障なのか、修理工にそのための知識と経験がないだけなのかをゴッチャにしている。修理不能はウソではないだろうが、大きな違いがある。腕のいい修理工なら直したかもしれない。「この子はことばが出ないでしょう」という場合も同じです。療育者の知識不足と経験不足からのことかもしれない。療育にたずさわるセラピストは、自分の知識と経験の範囲を客観的に正確に自覚することが必要です。とくに、自動車ではないので、状態を悪くする場合が少なくない。大切な幼児期を失してしまうのは罪が重い。

佐久間 徹

セラピストの責任について、とても大切なことを学ばせていただけることばです。少し長いですが、そのまま引用させていただきました。

引用

佐久間徹,石原幸子,「発達障害児の言語獲得 応用行動分析的支援(フリーオペラント法)」:59-60,ニ瓶社,2015.

教訓と対策

これは、どの分野においても、どの職業においても適用可能な普遍的な教訓だと思います。特に、子どもの発達や療育に関わる際には、専門家の判断が子どもの将来に大きく影響を及ぼす可能性があるため、慎重さが求められるという警告も含まれています。

  • 専門家であっても自分の能力(スキル、知識、経験)には限界があることを自覚し、それを謙虚に受け入れるべきである。
  • 臨床経過が思わしくない場合は、必要に応じて他の専門家の意見や助けを求める姿勢が必要である。
  • 自己の知識や経験を過信せず、常に学び続ける姿勢が大切である。

まとめ

経験年数を重ね、ベテランと呼ばれるようになっても、臨床経過が思わしくない場合には、症例検討会を積極的に開催することが推奨されます。症例検討会の正式な形式に固執する必要はなく、気軽な相談でも十分に意義があると思います。経過を整理して話すことで、自身が見落としていた点に気づくことがありますし、新たな視点や解決策が浮かぶこともあります。また、検討内容によっては、職場内で適切な相談相手が見つからないこともあり得ます。そのため、職場外で相談できるように、普段から広い人脈を築いておくことが大切ですね。

この「セラピストの能力の問題」は、今後も臨床に従事する限りは、何度も読み返したいことばです。「臨床を支えることば」のカテゴリーに入れておきたいと思います。

貴著では、フリーオペラント法による言語獲得指導の実践が詳細に説明されています。