AACとは
聞く、話す、読む、書く、身振り、手振りなどのコミュニケーションに障害をもつ人が、その人の残存能力に応じて意思を伝える方法をAAC(Augmentative and Alternative Communication:拡大代替コミュニケーション)と呼ぶ。
AACの種類
非エイド(道具を使わない)コミュニケーション技法
- 空書
- ジェスチャー(身振り、手振り)
- 目や唇の動きを読み取る
- 口文字盤
- YES/NOサイン
ローテク(簡単な道具を使った)コミュニケーション技法
- 筆談(筆記具を工夫する)
- 文字盤
- 透明文字盤
- コミュニケーションボード
ハイテク(電子機器を使った)コミュニケーション技法
- 携帯用会話補助装置
- 重度障害者意思伝達装置
一部をちょっと詳しく説明
口文字盤
以下のような手順で文字を綴っていく方法
- 患者様が伝えたい言葉の母音(あいうえお)の形をとる
- 読み手が患者様の口の形を読み取る
- 読み手が読み取った段を読み上げる 例:「う」であれば「うくすつぬふむゆる」と読み上げる
- 指定したい文字のところで患者がまばたきをする
- 文字を声に出し患者様に確認する⇒確定
- 濁点は二回まばたき 半濁点(ぱぴぷぺぽ)は三回まばたき
口文字(音読文字盤)の進め方 景山Ver. | 日本ALS協会島根県支部 (als-shimane.com)
もう一つの方法として、口の形を読み取る代わりに読み手が母音を読み上げてく方法もある。
YES/NOサイン
- 頷きや首振りが難しくなった場合に、動かしやすい体の部位を使った新たなサインを決める。
- 例:瞬き1回なら「Yes」、瞬き2回なら「No」等。
透明文字盤
- 透明なアクリル板などに50音表や数字を記しておき、その透明の板を通して、患者様と支援者が視線を合わせ、合図をすることで文字を確定していく。
- 支援者側の慣れが必要。
- 重度障害者意思伝達装置と併用して用いられることも多い。
携帯用会話補助装置
- 「発話及び書字に困難を有する人が、キーボード操作を基本とする携帯性を重視した機器で、文字盤にある文字(キー)を押して(=直接入力方式)、文字綴りで文章の作成や音声で伝える機器」と、「あらかじめ録音した任意の内容を、文字盤にあるシンボル(キー)等を押して、再生や文字表記させる機器」とがあり、後者をボカ(VOCA;Voice Output Communication Aid)と呼ぶことがある。
- 携帯性を重視した機器の特徴から機器の管理が簡便であり、屋外やショートスティ等においても有効に活用できる。
注意点
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする神経難病の患者様については、進行性疾患であるため、残存機能が縮小していくことを見据えた対応が必要。
- 電力や複雑な機器を必要とするため、ハイテク(電子機器を使った)コミュニケーション技法は災害時に使用できないことがある。
- 患者様の状態や環境の状況に応じて、非エイド・ローテク・ハイテクを上手に併用していくことが必要。
参考
- 佐藤洋子,意思疎通が困難な者への障害種別ごとに求められる支援手法に関する文献レビュー,保健医療科学,2017;66(5):502-511.
- 小林宏高,筋萎縮性側索硬化症患者のためのコミュニケーション機器,Jpn J Rehabil Med,2018;55(7):564-572.
- 日本リハビリテーション工学協会 編 「重度障害者用意思伝達装置」導入ガイドライン2020-2023, https://www.resja.or.jp/com-gl/gl/index.html
- NPO法人ICT救助隊 制作 「難病コミュニケーション支援テキスト」,2021.